【アブダビ1日】日本代表MF南野拓実(24=ザルツブルク)が決勝で今大会初ゴールを挙げた。2点を追う後半24分、相手のスライディングをかわして決めた。カタールに完敗したが、今大会、出場6試合目で初得点。苦しんできた次世代のエース候補が最後に一矢報いた。

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気迫がボールに伝わった。南野の今大会初得点は存在を示すゴールとなった。2点を追う後半24分、中央で素早いパス回しに反応。相手のスライディングを軽い身のこなしでかわし、抜け出してシュート。前半シュート1本で苦しんだゴールをようやくこじ開けた。

しかし、初得点も実らず敗れた。「非常に悔しい結果になった。追い付けなかったのは自分たちの実力不足だと思う。チームとして1試合1試合成長していけたけど、日本にとっては優勝しないと意味がない」と言った。

ここまで苦しんできた。森保ジャパンで日本代表の定位置を確保してから目標に掲げていたアジア杯。FW大迫やMF原口、堂安がゴールで決勝まで導く中、1人得点を挙げられていなかった。準決勝イラン戦では全3得点に絡む活躍、攻守に体を張って貢献してきた。だが、どうしてもゴールが欲しかった。

174センチ、68キロ。決して体格に恵まれたわけではない。それでも、欧州で屈強なDF陣相手に技術を駆使してゴールを決めてきた。小学生時代通ったサッカー塾クーバーのコーチ吉川啓太さんは「体の使い方が小学3年生の頃から変わっていない。姿勢が立っていて、体幹強くプレーする。筋力で負けていてもパワーバランスで勝てる」という。

力強く、しなやか。欧州でFWとして戦えるのは幼い頃から鍛え上げた精神面と柔軟性があったから。吉川さんは「体格の大きい人に臆さずぶつかっていって、うまくいかなかった時にもう1回プレーする」。負けず嫌いっぷりを発揮して学習を深めた。この日も体幹の強さで生みだしたゴール。プロとなり、ザルツブルクで積み上げたものがアジアの舞台で発揮された。

優勝には届かなかった。攻撃は機能せず、1点のみにとどまった。試合終了の笛が響くと、途中交代の南野は1人でピッチに座り込んだ。スタッフに手を引かれるまで約30秒。立ち上がれなかった。あと1点、あと2点…。南野に押し寄せた後悔の念。この思いを糧に、きっとこれからより強い男へと成長するはずだ。【小杉舞】